株式会社アンカーマン
どのようにすれば今までの延長線上にない未来を創れるだろうか?
伊藤:端的に言うと、弊社のように大量に仕入れて大量に売る方法をとっている会社が他にないんです。競合他社が自社の得意な商材のみを扱うのに対して、弊社では測定器の周辺機器も何でも扱います。
2年前に営業部隊を作って買取営業を強化し、テレアポ、ファックス、DMなど様々な手法で開拓、全国どこへでも引取りに行き、回転重視でネット上で販売します。
伊藤:私が常に会社にいて、全てを指示しなければ仕事が進まないという状況を変えたかったんです。単発の人材育成の研修のお誘いもありましたが、経営者の交流会で和田さんとお会いして「1年間かけて目指す組織づくりを実現し、売上を上げていく」という方法に興味を持ちました。
初めは半信半疑でしたが、導入前の12時間のトライアルセッションを体験して、変わる予感がしました。私がやらざるを得なかった会議運営を専門のコーチが推進してくれて、メンバーの発言も引き出してくれる。期待が高まり導入を決めました。
伊藤:私が会社にいなくても9割以上の仕事が回るようになったことが一番の変化です。以前の社員は何をするにも「社長、どうしましょうか。」と、考えるより先に私の意見を聞いてくる状態でしたが、今では「私はこう思います。〜しようと思いますがどうでしょう。」と考えて提案してくれるし、実行力も上がりました。
コーチがファシリテートしてくれるので私が発言しなくて良いし、社員が自立し自走する状態ができてきたと感じます。
売上の数字も毎年上がっていて、コロナの打撃は大きいものの、今は持ち直して昨対越えが見えています。
伊藤: 私が発言するとそれが正解になって皆の思考が停止してしまうところを、和田さんが入ることで皆に考えさせ、意見を引き出してくれる。私は、「そうしましょう」と言うだけでよくなりました。
また、習慣化できたのが大きいと思います。単発の研修とは異なり、1年をかけて月に一度の経営会議と毎週の進捗確認会議を実行し続けるので、社員の発言や行動、意識への変化がしっかり定着します。
和田:全員が意見を書いて発言するという「すごい会議」の手法と、“発言のフォーマット”を活用した効果も出ています。例えば「提案があります。〜してください。なぜなら〜だからです。」という発言の型を使うルールがあるのですが、これに則ると、問題の指摘でもただのコメントでもなく主体的な提案の発言が生まれます。
伊藤:皆で全体目標決めた上で役割と責任を明確化し、会議の度に売上利益、仕入金額、原価率など様々な数字を追うので、以前はなかった数字の意識というものが全員に根付きました。また、仕事が「自分ごと化」されて責任感も出てきたのを感じます。
伊藤:営業の問題解決ですね。当初、テレアポの件数を増やすことを嫌がっていた営業部長が、今までにない件数の実行を宣言して自ら行動し始めたことです。実行してみるとその解決策は想定した数値は出なかったのですが、彼が自発的に言い出してくれたからこそできた企画でした。
和田:「目標を達成するためには、何件テレアポをしますか?」という質問に対してその行動が起こったと記憶しています。今までと同じことをしていては手に入らない目標を「どのようにすればできるか?」と質問し、思考することで行動が変わります。
これも「すごい会議」のフォーマットの一つです。
伊藤:何か問題が起こっても「そのレベルに行くにはどうするの?」「どうしたら解決できる?」と建設的な会話できるようになったことがいいですね。
伊藤:私一人よりも、皆さんに意見を出してもらった方が非常に多くのアイデアが出るということです。先日、経営理念やビジョンをつくる会議を丸2日かけて自分たちで実施したのですが、その時も、幹部メンバーの女性が出した言葉が素晴らしく、理念の言葉をそれに決めました。
また、「すごい会議」は会議の最後に何らかの結論を出すのですが、その結論が、良い意味で私が想定もしていなかった着地になることが多かったです。つまり、自分の中にない考えやアイデアがそれだけ社員の中にあるということ、これは価値ある発見でした。
伊藤:今期は一旦、自分たちで会議を実施することにチャレンジしています。私がいなくても組織が成長できる状態をつくるには有効な仕組みだと分かったので、月に一度の戦略会議と名付けた会議は幹部メンバーで、そこで決まったことの実行を管理する会議は週に一度全員で、「必ず実施する」と決めて継続しています。和田さんと実践した1年間でスタートの基盤は整ったので、今は自走して定着させています。
和田:決めたことをきちんと実行できる会社は意外にも少ない中で、伊藤さんご自身が「すごい会議」の仕組みをうまく自社に最適化して機能させ、継続いただいているのが非常に嬉しいです。
伊藤:売上数字の達成はもちろんですが、それは営業努力を地道に積み重ねていくことで実現できると考えていて、その先には上場という選択肢も見えてくると思っています。
そして数字だけでなく「社員が達成感を得られる会社」であることも目標の一つ。社員の表彰や賞与の還元もできてきているので、今後はより一人ひとりがパフォーマンス高く働ける状態をつくり、それを正しく評価還元できる組織にしていきたいですね。
伊藤:成長段階にあってトップダウンの経営に限界を感じている経営者には良いと思います。ある程度の規模になると全部を一人で見ることができなくなる。そんな時に社員が勝手に動いてくれる状態がつくれると、経営者は次のビジネス展開を考える時間が手に入ります。
(取材日:2020年12月)