株式会社アンカーマン
どのようにすれば今までの延長線上にない未来を創れるだろうか?
藤田:2005年の創業から17期目を迎えます。飲食事業を中心に“100年企業100億100店舗”を目指す中で、ここ数年は100億の“瞬間風速”でなく「いかに継続維持できるか」を考えてきました。
改めてマーケット分析をすると、“日常食”ד路面店”ד大衆酒場”の3要素を含む事業コンテンツが必要だとわかり、M&Aでその領域を強化しようと日本中を探して見つけたのが、仙台の“ときわ亭”。2019年の12月にリブランディングして関東に店を出しました。
コロナ禍で既存ブランドは店舗を減らしましたが、“ときわ亭”はこの2年で50店舗出店。全体で約70店鋪を運営しています。
藤田:100億の永続的価値を生む会社を目指し、“緊急性”と“重要度”のマトリックスでいうところの“緊急ではないけれど重要な課題”リストから、“コンテンツ”と“経営マネジメント”を解決すると決めたタイミングでした。
成長は順調なものの、トップダウン経営の限界や社内の閉塞感も感じていました。“ときわ亭”という素晴らしい業態を手に入れても、それを動かす人や社内の風土が変化しなければ、瞬間風速で終わってしまう。
『人材を育て、風土を変え、自社で経営をマネジメントする仕組みをつくる』
M&Aを機に組織を改革しようと「すごい会議」を導入しました。
藤田:飲食業界で伸びている企業が「すごい会議」を導入していて、私がベンチマークにしている成長企業もその一社でした。
継続的な成長に重要なのは、ブレイクスルーのための“エンジン”が社内にあることだと思っています。その企業はどんな業態でも成功させていたので、きっと“エンジン”となる仕組みがある。真似したいと思いました。
私にとって、仕事は「誰とするか」が重要。他のコーチにもお会いしましたが、実績や人柄含め、自社の社風にマッチすると直感したのが和田さんでした。
藤田:新業態の“ときわ亭”にチャレンジするにあたり、「2年で50店舗出店」という目標を掲げ、達成しました。その結果「外食産業界でその年に活躍した人、話題になった人」が選ばれる2021年の外食2021年の外食アワードもいただきました。
ここに至った最大の変化は、社員が自分たちに自信を持てたこと、社内が一致団結できたことにあると思います。
これまでトップダウンで来たせいか、社員は、業績目標を達成していても自社ブランドに自信がなく、そこで働く自分にも誇りを持てずにいるように見えました。しかし今回は彼ら自身が考え、動いて“ときわ亭”を成功させたんです。お客様が絶えない状態をつくり、評価され始めた頃にコロナ禍に突入したものの、逆に団結力が強まりブレイクスルーできた。大きな自信になったはずです。
藤田:大きくは2つ。一つは成果を出すための“経営マネジメントツール”としての役割です。
まず、私が目標を決めるトップダウンから、社員が自ら目標やKPIを考えコミットする方法にチェンジしたことで、仕事が自分ごと化し、責任感や真剣度が変わりました。
目標達成のためのKPIやコミットメントのベストな設定、それを週次で管理する進捗会議の仕組み。どれが欠けても「2年で50店舗」には届かなかったはずです。
以前は各部署長に委ねて属人化していたマネジメントが、全社レベルで可視化され、進捗状況も一目瞭然。社員が自ら目標にコミットし、実行・管理する“自律自走する組織”を手に入れました。
そして二つ目の価値は、全ての根底とも言える“信頼関係を構築するツール”としての役割です。
藤田:信頼関係=“安心・安全の基盤”を社内につくることができたと思っています。
10年以上私がトップダウンでやってきたので、私には言いにくい“本音”も、社員にはあって当然。「すごい会議」はそれを声にすることで、新陳代謝を生み出しました。
きっかけは会議の初日。組織の(またはあなたの)「不都合な真実」「言えない問題」について全員で発表する場面があり、私としては聞くのもつらい、ショックな本音ばかり(笑)。でもそんな本音を『口に出して言っていいんだ』と彼らが感じることで、場の雰囲気や関係が明らかに変わり始めたんです。会社だからと装わず、本来の自分の姿でいられる方が楽しいし、仕事のパフォーマンスも上がりますよね。
そこから意見が出やすくなり、前向きな会話やワクワクするアイデアが出始めました。「楽しい雰囲気の店づくりを」と店舗に求める前に、私たち本部メンバーが団結すべきだったんです。
和田:「不都合な真実」は解決できるかどうかよりも、テーブルに上げること自体に価値があります。“気づいているけれど触れていないこと”を口にした瞬間に『それって言っていいんだ!何かが変わりそう!』と心がオープンになり、信頼関係への一歩が生まれます。
もちろん、我々コーチがその場で「すごい会議」プロジェクトを進行している、その事実が“場”の心理的安全性を担保します。
藤田:私が求めていたのはこういう人間関係だと、改めて感じました。創業から“ハピネス&スマイル創造カンパニー”を掲げ、笑顔と「ありがとう」を追求してきたはずが、実は身近な社員が笑顔でなかった。私にとって重要なのは、業績以前に社員の笑顔です。
と同時に、トップダウンからボトムアップの全員経営へと、時代が変わったことを実感しました。
“ときわ亭”は、信頼関係をベースにみんなのアイデアを尊重してつくりあげる“みんなのブランド”として誕生した、全員経営の象徴。一人ひとりが“自分のブランド”として愛着を感じるからこそ、自主的な行動が生まれています。
藤田:以前よりもみんなが“仲間”になれたことです。目指すゴールが共有できていて、そこに向けてシナジーを生もうという意思疎通もできている。自分の利益を優先する他責の人はいません。
その根底にあるのは、信頼し、言いたいことを言い合える環境。
コロナ禍では、“仲間”という無形資産にとりわけ勇気づけられました。しかも“仲間”を活かす経営マネジメントがあり、素晴らしい業態もある。コロナ禍以前に“仲間”ができあがっていたのは、経営者として大きな救いでした。
藤田:自分の“正しさ”を手放せた気がします。以前は「私の考える戦術」=「会社の戦術」だったので、『私が正しくないと会社がダメになってしまう』というプレッシャーに苛まれていました。
ところが、メンバーがオープンマインドで良いアイデアを出すようになると、実は彼らの方がずっと優秀だとわかった。“0秒レモンサワー”の商標登録を取るという案もメンバー内の会話から生まれました。
私は社員の意見を聞くようになり、それぞれが互いの違いを尊重する。この好循環の文化を意図的に創造できるのが、「すごい会議」の偉大なところです。
藤田:社員の幸せが会社の成長につながると考えているので、スキル・マインド両面で育成には力を入れています。理念と行動の一貫性を保つために、今は個人の理念と会社のビジョンを一貫させていく研修もしています。
その中で「すごい会議」は、会社の理念に基づいた“マインド”にアプローチできる存在です。
現場からすると、最短距離で結果を出せるスキル研修に飛びつきたくなりますが、それだけでは長続きしません。大切なのは「なぜやるのか」「何のためにやるのか」。
「“笑顔”と“ありがとう”で私たちが最高の仲間になって、お客様にもそれを届けるためだよね。そのための数値目標だよね。」という前提があってこそ、戦術が活きる。理念やゴールを共通言語化してマインドに息づかせていけるんです。
その上で、「どのようにすれば達成できるか」という問題解決法、体系化されたマネジメント法があるので、理念からブレることなく進めます。
和田:社員の方からは「うそ偽りなく本音で進められるのが良かった」「全員で良くしていこうという本気を感じた」「他の研修とは違う気がする」などの声をいただきました。
単なる研修でもなく管理システムでもない。メンバーが経営者と同じ視座で目標を共有し、達成までを最速で実現させていけるプログラムです。
藤田:3年以内に“200店舗200億の「笑顔」と「ありがとう」が生み出せるような商品サービスを開発し、世界No.1サービスをつくるイノベーターになる”というのが一つのビジョンです。
世の中に必要とされる商品サービスをつくることができれば、200億は実現できるはずです。それを瞬間風速で終わらせない経営管理が「すごい会議」であり、社員のマインド教育。
私個人の理念として「人に感謝し誠実に貢献する。人によろこばれて生きる」というのがあるからこそ、身近な社員に笑顔の花が咲く職場づくりをしていきたい。一人ひとりが仕事を通じて「美味しい、楽しい、新しい空間をつくる“場づくり”のプロ」になることで、プライベートの“場”も豊かに創造していけるはずですから。
藤田:成長戦略として『Good Company, Good Communication』を掲げています。つまりエンゲージメントの高い組織をつくることが最大の戦略です。
“笑顔の花が咲く職場”とは、“社員が離職しない職場”。
飲食業界の離職率を分析すると、アルバイトの離職率が低い店舗ほど社員の離職率も低く、そういった店舗は高収益なんです。現在はアルバイトの離職率をKPIとしてエンゲージメントを強化し、既に成功しつつあります。
またエンゲージメントを高めるには、コミュニケーションの“量”が必要なこともわかってきたので、DXも積極的に取り入れています。タッチパネルやアプリ開発で一定領域の工数を減らし、お客様や従業員同士のコミュニケーションを増やす。全てはハッピーを生み出すためです。
ハッピーな人がハッピーなアイデアを出し、会社や社会を豊かにする。そこに私の喜びがあるからこそ、“笑顔”と“ありがとう”を真ん中においた理念を“仲間”と実現していきます。