なぜ今までは、「PDCAを回せる組織」が育っていなかったのですか?
徳田:このビジネスの難しさは、流れ作業みたいな商売ではないこと。「女性の感情の塊」でできたバランスボールの上にのっかてるようなものです。いつ相手の気持ちが変わるかわからなくて、おかしいなと思ったらすぐ手を打たなきゃいけない。企画を考えても、スッと企画が浸透してうまくいくこともあるし、そうじゃない時もある。ときには宗教家のようになって大切な想いを伝えることもあります。
同時に、データビジネスの側面もある。数字(経営指標、KPI)を見るということ自体は、会社の文化としてあります。KPIも、たとえば「サロンでの体験数」など数えられるだけで30個ぐらいあります。全国約730のサロンを全部見るわけにはいきませんが、数字には出てきます。行動を数字で追いながら、 PDCA をぐるぐる回していく経営です。
この感情と数字のマネジメントを両立させるのが難しいんです。
感情と数字のマネジメントを両立させるのが難しいというのは、どういうことですか?
徳田:経営上の数字はあまりにも多いので、どの数字を見て、どれをピックアップして、どうメンバーに共有していくのか、というのが経営センスです。重要なKPIを3つぐらいに絞って、そこに対して執着していきます。
「今本当に見るべきKPIは何か? それはなぜ? この数字にイレギュラー出ているよね? うまくいかないのはなぜ?」ということを、気づくか気づかないか、で差がつきます。
ここで大事なのは「正しい見通し」なんです。「この数字で、正しく目標に向かっているのか?」という見通しができれば、異常値も発見できて手が打てます。気づくのが1週間遅れれば、打ち手も1週間遅れます。そんな「見通す能力」が経営幹部に必要な数字を見る力です。
社長の私なら、見れば異常値がすぐにわかる。大量の数字の中から見えてくるんです。「このままではうまくいかない」と見通せるわけで、「ああしろ。こうしろ」と言える。でも同時に、私が先回りして言うから幹部が深く考えなくなっていました。
「数字を正しく見通す力」を育てる必要があるのですね?
徳田:そうです。すごい会議の目的は、HL管理職が自分で見通しを立てられるようになることです。見通しを立てられれば打ち手を各現場でいち早く打つことができるようになります。見通せなければ、打ち手も打ちようがありません。
だから、「目標を必ず達成する」というコミットメントには、数字を見通せる能力が必要なんです。精神論ではありません。
なるほど、目標達成と見通す力とは一体なのですね。徳田社長ご自身は、どのようにして数字のセンスを磨いてきたのですか?
徳田:私はなぜ数字が見えるのか? 社長という立場が一番コミットメントが強いからだと思うんです。見通しをまちがえると、最悪、会社が潰れます。以前の会社の経験ですが、手形をちゃんと落とせるか、毎日CFOと一緒に資金繰りを確認していた時代もありました。
ファンド傘下の会社の場合、ファンドのとびきり頭のいい人達から「この数字でいいんですか?!どうするんですか?」と詰められます。きちんと説明できないと「社員を削減しなさい」と言われてもおかしくありません。これは辛い。だから僕は誰よりも早く見通しを立てて、「こうします」と先取りでストーリーを語らないと。
「オーナーシップ」のマインドとは、そういうことです。見通しを間違えると、痛みが自分にくるんです。見通す力を高めることで、生き残れるわけです。